◆メンズシャツの代表 - それはドレスシャツ(ワイシャツ)◆
メンズシャツを着方の面から分類すると、
ドレスシャツ(DRESS SHIRTS)と、
スポーツカジュアルシャツ(SPORTS CASUAL SHIRTS)
に分類することができます。
ドレスシャツは中衣料に分類されていますが、これはアンダーウェアとしての実用性、機能性としての肌ざわり、吸湿性、耐洗濯性、強度等が求められると共に、一方、上衣的要素としての、見た目の美しさ、色や柄の変化等が求められます。
着る人の好みの高度化、多様化とともに、様々なドレスシャツが求められる様になり、それに応じてシャツ地も変化してきました。
シャツ地の素材としては、古来親しまれてきた、天然繊維と、化学的に合成された化学繊維があり、それらを、単独か、混ぜられて使われます。
もっともポピュラーな天然繊維。吸収性と保湿性があり、通気性に優れ、染色性も優れている。
サラッとした感触があり肌触りが良い。水に濡れた状態だと繊維の強度が上がり、アルカリや熱に強くなるため、洗濯にもよく耐え、アイロン仕上げも高温で行うことができ、シャツ素材に最も適した性質を持っている。
反面、シワになりやすく乾きにくい、水分によって地の目方向に収縮しやすいのが、最大の短所。
原綿は、品質の良いものほど繊維が長く、細くしかも強いため、細番手の糸を紡ぐ事が出来る。
優良品種としては、シーアイランドコットン(海島綿)やエジプト綿、新疆綿等がある。
昔から夏物繊維の代表として、様々な衣料に用いられてきました。
綿繊維よりも繊維配列が優れている為、硬く伸びにくい。天然繊維の中で最も強い素材。
表面は毛羽が少なく平滑で、若干光沢があり、接触冷感に優れているので、ひんやりとした肌ざわりを併せ持つ。
シャツ用素材としては、強度があり、涼しい肌ざわりでシャリ感と清涼感があり、通気性に優れ、水分の吸収や発散が早く洗濯で汚れを落としやすい、といった特徴から高温多湿な夏に最適な素材である。
しかし、しわになりやすい、手ざわりが硬い、染色が難しく鮮やかな色が出しにくい、等の性質も持っている。麻という呼称は茎からセルロース繊維が採れる植物の総称で多くの種類がありますが、茎の皮、または葉の繊維が衣料用に使われる。
シャツ地としては、リネン(亜麻)、ラミー(苧麻)等が用いられる。
リネン(亜麻)は・・・サラサラ&シャリシャリ
ラミー(苧麻)は・・・サラサラ&チクチク
という肌ざわりの違いがあり、これは繊維長の違いによるものです。
※苧麻・・・中国、台湾、韓国などの暖地に生育する苧麻植物の靭皮繊維
※ラミー・・・インドネシア、フィリピンなどの熱帯及び亜熱帯地に生育するラミー植物の靭皮繊維
化学繊維のひとつで、英国ICI社が開発した合成繊維。その後米国デュポン社が初の工業化、日本でも技術導入により国産化され、“帝人”や“東レ”でテトロンやエステルの商標でも知られる。
軽く、弾性に富みシワになりにくく、型くずれを起こしにくい。また、吸湿性が低く、すぐに乾き、水による収縮がない。最大の特徴は、他の繊維との混紡交織性に優れており、天然繊維との相性が抜群に良く、汎用性が高い。強度があり耐薬品性に優れている等の長所を持っている。
熱可塑性が優れている為、プリーツなど形態固定加工をし易い。形態安定素材にも使用される。
反面短所として、吸湿性が低いので乾きやすいが、静電気を帯びやすく汚れやすい。毛玉(ピリング)が起きやすい、ことがありますが、ポリエステル混のシャツ地は天然繊維の欠点を補い、実用性を高めています。
長繊維、短繊維、いづれでも使われるが、シャツ地としては、主として綿や麻と混紡して使われる。
※熱可塑性・・・形をつくって熱を加えると、その形が固定される性質。
常温に冷めても変形したまま形が残る。
ポリウレタンは、2種類の化学物質を結合させ(ウレタン結合)反応させることで生まれた重合体の総称。伸縮自在の合成繊維でスパンデックスとも呼ばれる。
1937年にドイツで開発された繊維で、IGファルベン社で最初に実用化された。
ゴムのように5倍以上も伸びるが、スパンデックス100%で商品にすることはなく、他の繊維の中に3~15%を併用して使う。
伸縮性を機能として持たせたもの、いわゆる“ストレッチ素材”や革製品に似せた合成皮革のコーティングなど、また、生地と生地を縫わずに接着樹脂として利用するなどして利用する。
しかし、衣服で利用されるポリウレタンは、経時劣化を避けられないという弱点がある。
※経時劣化・・・体指、水分、大気ガス、熱、紫外線などの影響を受け、時間と共に少しずつ分解されていってしまう現象。
絹に類似する繊維を作ろうとしたことから始まったため、「人絹」とも呼ばれる。人間の手で創り出された最初の化学繊維。日本が取り扱った最初の化学繊維でもある。
再生繊維の一つで、主原料である木材パルプを溶かし、その中のセルロース(繊維素)を取り出して薬品を加え、ビスコースという粘調な液体にする(再生する)。
これを、ところてん方式(細い孔のノズルから押し出す)で再び繊維に再生したもの。
吸湿性、吸湿性は綿より優れているが、耐アルカリは綿より劣る。
張り、腰がなく、シルクのような光沢があり、風合いが良く着心地が優れている。ドレープ性や発色性も良い。
しかし、シワになりやすく、水に濡れると強度が著しく低下するのが最大の欠点。
洗濯で縮みやすく、摩擦に弱い。水ジミができやすい。
再生繊維の一つで、主原料が木材パルプでビスコース法のレーヨンに対し、キュプラは、主原料がコットンリンターで銅アンモニア法で製造されたもの。
レーヨンと同様、コットンリンターを銅アンモニア溶液に溶解し、紡糸してつくるセルロース系繊維ですが、主原料にコットンリンターという高品質な繊維素を使用している。
スーツの裏地に用いられるベンベルグは、旭化成の商標でキュプラ100%の素材です。
吸湿性が良く、静電気が発生しにくい。シルクのような光沢があり、強度が高く縮みにくい。
短所は、摩擦により毛羽立ちやすいこと。
※再生繊維・・・天然の高分子(=植物繊維素(セルロース))を、化学薬品で溶解し、繊維の形に変えて、再びもとの高分子に戻した繊維。
※コットンリンター・・・綿花採取後の綿の実の表面に残った短い繊維。(良く伸びた繊維を“リント”、短い繊維を“リンタ”と称します。)
ウールを目指した合成繊維で、米国のデュポン社が生産を開始。
かさ高性を付与することによって、ふわっとした感触が得られ、ソフトで柔らかく、弾性や保湿性に富み、シワにもなりにくく、しかも軽い。染色性にも優れる。また、カビ、害虫にも強い。
シャツ地としては、綿やウールと混ぜて、秋冬素材として使われることが多い。
ナイロン、ポリエステルと共に三大合成繊維の一つ。
短所は、吸水・吸湿性に乏しく、高温に弱い。また、静電気も起きやすく、ほこりを引き寄せる。
毛玉が発生しやすい。
米国のデュポン社が開発し(カローザス博士によって発明)、工業化された世界初の合成繊維。
「石炭と水と空気から作られるクモの糸より細く鋼鉄より強く、絹糸にも勝る繊維」のキャッチフレーズが誕生した。日本でも東レが製品化し、当時、女性のストッキング素材として使われた。化学繊維でありながら、成分上は「絹(シルク)に最も近い合成繊維」と言われている。
繊維の中で最も軽く、強度が抜群で弾力性に富み、シワになりにくい。薬品、カビ、害虫に強い。
しかし、吸水・吸湿性に乏しく、通気性が良くない。また、熱に弱く日光などで変色する。
静電気が起きやすい。
原材料はレーヨン等と同じ木材パルプやリンターから採った繊維素で、吸湿性が高く、シルクのような光沢があり、静電気も発生しにくいのが特徴。
英国で初めてアセテート繊維として工業化された。別名“美の繊維”と言われるほど優雅な光沢を持ち、絹のような感触がある。
また、軽く弾性に富んでいてシワになりにくく、型崩れもしにくい。
シルクのことで、養蚕の歴史は古く、中国の皇帝の妃が庭にある繭を拾上げ、細くて美しい絹繊維気づき、これが衣料としての絹繊維を用いた始まりと言われている。
繊維の女王ともいわれる絹には、「家蚕絹(かさんきぬ)」と「野蚕絹(やさんきぬ)」があり、養蚕により熟成した蚕が吐糸して作った繭cocoonから得られる。
一般的に絹といえば家蚕絹のことですが、野蚕絹の中の「天蚕絹(てんさんけん)」は山繭とも言われ、我が国ではわずかここ長野県で飼育されるだけである。
繭1個から採れる繊維の長さは800m~1,500mで平均1,200m。
天然繊維の中では最も細い(10~30nm)シルクには上品で優雅な光沢があり、見た目の美しさや、手ざわりの良さ、ドレープ性と同時に保湿性と、わずかな繊維の太さの不均一性が空気を保留するので、薄地でも保温性に富んでいる。適度の強さと伸びを持ち、吸湿性も大きい。
染色性が良く美しく染め上がり、昔から高級衣料品に使われてきているが、シャツ素材としては、礼装用の高級シャツや、ファッション性の高いシャツ等に使われている。
肌に優しい性質がある反面、シミになりやすい、アルカリに弱い、水に濡れると縮や色落ちしやすい、熱に弱いなど、デリケートな取り扱いを要する。それでも、女性を中心に魅了して止まない素材であり、とても高価(希少)な素材である。
※家蚕絹・・・養蚕者が家内で蚕を飼って作る絹のこと。桑の葉を食べて成長する。家蚕絹には、精練前の繭糸を数本合わせて接着した生糸と、精練後の繭糸の表面に膠着しているセリシンを除いた練絹がある。
※野蚕絹・・・柞蚕絹(さくさんけん)と天蚕絹(てんさんけん)があり、野生の蚕というのではなく、野外飼育で一定の保護をして飼っている。楢、檪、樫、柏などの葉を食べる。性質、品質とも家蚕絹とは異なり区別して使われる。野蚕絹は繊維が太くかさ高で繭に柄がついて、機械では製糸できない。
羊毛。暖かい天然繊維。繊維そのものに優れた保温性と吸湿性がるため、“天然のエアコン”と呼ばれる。羊の種類や飼育地により品種も多く3,000種以上にのぼる。各地で品質改良が続けられ良質の毛を生産するようになった。他、アンゴラやカシミヤなどがある。
手ざわりが良く、保温性が高く伸縮性に優れ、吸湿性がある。また、表面は水を弾きやすく、弾力性に富み、シワになりにくい、など優れた特徴がある。型崩れしにくく、型崩れしても復元力がある超機能の天然素材。このため、頻繁に着用する事を前提としたスーツで主素材として使用されている。シャツとしては、主として、秋冬のウォーム素材に使われる。
短所としては、アルカリに弱く、強度が小さい。虫がつきやすく毛玉ができやすい。縮みやすい。フェルト状になる。
※フェルト化・・・表面が鱗片(スケール)で覆われている羊毛繊維は、摩擦異方性があり、布を強く揉むと繊維が絡まり収縮すること。濡れた時に起こりやすい。
ペルシャ語で麻の意味。アフリカ原産のアオイ科フヨウ属(ハイビスカス属)、1年生植物で、成長が非常に早くだいたい100~125日で成熟する。茎からは2種類の繊維が採れ、外側の層からは目の粗いものが、中心部からは目の細かいものが得られる。 ケナフの茎の皮は長くて丈夫な繊維なので、これだけで「ひも」や「糸」ができ、織物になる。また、茎の中の木質部(コア)と一緒に利用すると、「パルプ」や「紙」づくりもできる。
二酸化炭素の吸収、水の浄化などの効能があり、環境に優しい植物。
ケナフ混のシャツは冷涼感、さらっとした感じ、蒸れないといった手触り感と、着心地についても、運動直後や、運動後15分経過しても、T/C混シャツよりさらっとした快適な感触がする。
また、ケナフ混シャツは温まりにくい傾向にあり、夏場の着衣において清涼感が得られる可能性が示唆される。
複数の繊維をうまく組み合わせることにより、それぞれの繊維の長所を生かして、新しい素材を作ることが可能です。
混紡・・・紡績の段階で、繊維を混ぜて紡ぐ
交織・・・織布段階で異なる繊維の経糸と緯糸で織る
更に、様々な方法が試みられています。
原料を均一にするため、
よくかき混ぜる工程、これを同一方向に揃えて次第に細い糸にする工程、
何本かの糸を併せて1本の糸にしたり、糸に撚りを掛けたりする工程、
などからなります。
※紡績は、短繊維のみを使用し、短繊維を平行に並べ撚りをかけて糸にすることを紡績と言い、紡績によりできた糸を紡績糸と言います。
また、2種類以上の繊維を混ぜて紡績した糸を混紡糸といいます。
~~原綿の品種や工程より様々な種類の糸が出来上がります。~~
◇生地のもととなる「糸」の太さをあらわす数字(単位)のことを番手と言います◇
シャツ生地に使用する糸には、
1本の糸を使った「単糸」と、 単糸を2本撚り合わせて1本の糸にした「双糸」
があります。
場合によて、3本撚り3子糸として使われます。
ex.40番手単糸の場合・・・40/1、80番手双糸の場合・・・80/2と表記されます。
双糸にすると太さが均一化され、より丈夫な糸になります。
番手の大きい80番手以上の細い糸は、撚り合わせることで丈夫になるため、双糸にすることが多いです。
また、同じ番手の糸ならば、双糸使いの生地の方が、単糸使いの生地よりも肌ざわりがよくなります。
番手が大きくなるほど細い糸で織りあげる ⇒ 生地は柔らかく薄くなる・・・風合いや肌触りのいい生地
番手が小さくなるほど太い糸で織りあげる ⇒ 生地は透けにくく丈夫になる
ドレスシャツは50~120番手、カジュアルシャツは40~80番手が主流です。
40~50番手のドレスシャツは、比較的安価で手頃ですが、番手が大きくなればなるほど糸は細く、より良い糸になっていきますので、ビジネスシーンで着こなすドレスシャツは、80~100番手のものを選ぶのもおススメです。
一般的にドレスシャツに使われる番手は80番手ですが、100番手以上になれば、生地自体に 光沢が現れ繊細になってきます。「100番双糸」とあれば“きめ細かで繊細な表情を持ちながら丈夫でもある”と理解できます。さらに、120番手以上(120~140番手程度)になれば、高級シャツに!
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